機能訓練や運動をしているけれど、今一つ体調が優れない、少しずつ状態が悪くなっているような気がする・・・
リハビリ特化デイサービスの利用者さま達がそんなことを言われた時、お話しすることのひとつに食事のことがあります。
肉や魚などたんぱく質を含む食品を1日何回食べているか、野菜料理を1日何回食べているか、これらは利用者さまたちの身体機能・認知機能を維持向上していくお手伝いをするために必要な情報。
バランスの良い食事は健康の第一歩です。

公益財団法人長寿科学振興財団の調査では、年齢が高いほど摂取する栄養素・食品群の種類が少なくなっていくということが明らかにされました。
つまり年齢を重ねる過程で食品の選択肢が少しずつ狭まっていく、イコール食品摂取の多様性が失われてしまうことが示されています。
いつも似たような食品を摂っているということは、身体に供給される栄養素に偏りが生じるということです。身体機能・認知機能にとってプラスに働くはずがありません。
ではどういうことに繋がるのでしょうか?
食品摂取の多様性が失われるとどうなってしまうのか?
例えば、ごはんやパン、麺類など炭水化物を多く含む料理ばかり食べている場合を考えましょう。
炭水化物があれば筋肉を動かすエネルギーは確保できますね。
でも、筋肉は肉や魚介類、大豆・大豆製品が多く含むたんぱく質でできています。
そして緑黄色野菜や海藻類、果物が多く含むビタミンやミネラルは、たんぱく質を分解して体内で利用しやすい形にしたり、分解したたんぱく質を使って、新しい細胞を作り出すために必要な栄養素です。
ごはんやパン、麺類など炭水化物ばかりだと、新しい筋肉や皮膚、髪の毛などの細胞を作ることができないのです。
でも、細胞にも寿命があります。
たとえば新しい筋肉細胞が作られないと、今ある筋肉細胞が減っていくだけになります。
高齢になるとフレイルになりやすいとよく言われますが、必要な栄養素が足りていないためにフレイルが引き起こされているケースも多いのではないでしょうか。
まずは自分の食事のバランス、偏りを知りましょう。
食品摂取の多様性スコアで栄養摂取の偏りを知ろう
食事の偏りを知るために有用なのが「食品摂取の多様性スコア」です
どれだけの食品から多種多様な栄養を摂取できているのかを評価する方法として、同財団が開発したものです。
どんなものなのか、どう利用すればよいのか、みていきましょう。
食品摂取の多様性スコアの出し方
食品摂取の多様性スコアを出すために、チェックシートを使ってみましょう。

縦の列に1日分を記入します。このシート1枚には7日分をつけることができます。
肉類、魚介類、卵等、10の食品群のうち、1日で食べてたものに〇をつけます。〇の合計数が1日のスコアです。
炭水化物を多く含むごはんやパンといった主食は、毎日食べることを前提としているため、このチェックシートには含まれていません。
財団が開発した当初は毎日つけることは想定しておらず、この10種類の食品のうち毎日食べているものに〇をつけて1度だけ評価を行うというものでしたが、私はスコアを翌日の励みにしたり、一週間を振り返って自分の食品摂取の傾向を正確に把握して頂くためにも、毎日記録する方式がよいのではと考えています。
10の食品の頭文字をとると、「さ・あ・に・ぎ・や・か・い・た・だ・く」です。「さあにぎやか(に)いただく」と覚えやすい並びですね。ロコモチャレンジ!推進協議会が考案した合言葉です。
上の例では、5月3日の魚・油・野菜・海藻・大豆に〇がついていて、〇の数は5つ、1日のスコアは5点です。
点数が高い程、様々な食品から栄養素がとれていることを示します。また、たんぱく質の割合も高く、バランスのよい食事が出来ていることを表しています。
早速チェックしてみてくださいね。
こちらからチェックシートのダウンロードもできます→「食品摂取の多様性スコアチェックシート」
食品摂取の多様性スコアの評価とは
身体能力の維持には最低でも4点以上、できれば7点以上が理想だそうです。
また加齢に伴う筋肉量や筋力の減少、いわゆるフレイル(虚弱)の予防にも7点以上のバランスの良い食事を続けることが有効であることが分かってきています。
上の例では5点だったので、評価は「もう一息」ですね。身体能力の維持はなんとかできるかもしれないが、フレイル予防には足りないということです。
積極的に身体機能を維持、そして向上させていくためには、やはり7点以上を目指して食生活を見直していく必要がありそうです。
毎日のスコアを意識して、食事を摂っていきましょう。
食品摂取の多様性スコア | 評価 |
7点以上 | すばらしい・フレイルの予防にもなります |
4~6点 | もう一息 |
3点以下 | 要注意・がんばりましょう |
多様な食品を摂って、身体機能・認知機能の維持向上を目指そう
買い物を工夫しよう
足腰が辛くて買い物に出られないかた、近くに買い物をできる場所がないかたなど、食材を買うこと自体が大変になっているかたもいらっしゃるでしょう。
利用地域なら生協等の配送サービスや、ネットスーパーの利用もおすすめです。
お弁当やお惣菜も利用してみよう
わかってはいるけれど、自分で調理するものではなかなか多様性を実現させるのは難しい、、、という場合は、コンビニやスーパーのお弁当、お惣菜でも大丈夫です。
チェックシートで摂取できていない品目が含まれているものを購入するようしてみてください。
また、思い切って配食サービスを利用するなども選択肢の一つです。
以前のプロテインの記事でご紹介した栄養食品飲料もおススメです。

食品摂取の多様性スコアを、自由と幸せのために利用しよう
栄養学では、以前は1日30品目摂取を目標としていました。でも、カロリー過多になる傾向等で見直されて、最近だと14品目摂取が望ましいとも。
色々な考え方がありますが、一時は意識しても、長続きさせるのは大変でした。
でも、10種類というのは覚えやすく、チェックシートにしても煩雑にならず、長続きもしやすそう!そしてしっかりと栄養バランス・多様性を考えられたものでした。
この食品摂取の多様性スコアは、身体機能を維持・向上していくためのキーポイントになりそうですね。
私の勤務先では、この食品摂取の多様性スコアチェックシートをいつでも持ち帰って頂けるように置いてあり、利用者さま達に利用をおすすめしています。
機能訓練や運動をしているけれど、少しずつ状態が悪くなっているような気がする、、、そんな時は、食品摂取の多様性が足りていないのかもしれません。
身体を動かすこと、しっかり栄養をとること、この両輪は運動機能・認知機能維持向上のための絶対条件です!
ぜひご自分、ご家族のために、食品摂取の多様性スコアを利用してみてくださいね。