先日、勤務先のリハビリ特化型デイサービスのご利用者さま、変形性膝関節症の既往があるMさんが、朝起きてからFoot Fit 3と、足放り体操をしているとお伝えしました。
今日はその足放り体操をするきかっけとなった本をご紹介します。
それは『100年ひざ』。

本の中で紹介されている足放り体操は、『100年ひざ』著者で、膝関節のスペシャリストと言われている巽一郎先生が提唱されているもの。
巽先生は約1万4千人のひざを診て、5300件程の手術を執刀してきた膝関節手術の名手でありながら、切らずに治すスーパードクターです。
巽先生が切らずに治す理由、それは軟骨がすべてなくなった患者さんでも「復活」する現実を見てきたから。手術をしなくても「たつみ式保存療法」という4つの方法で痛みがとれ、前のように歩いたり、活動したりできれうようになる人が後を絶たないそうです。
痛みが消えてずっと歩ける!すり減った軟骨は蘇る!
膝関節は大切に使って行けば108年は保てるそうです。
でも年齢とともに曲がったり痛みが出たり、歩くのに支障がある病を抱える場所でもあります。
膝関節の痛みは、関節を構成している骨~大腿骨・脛骨・腓骨が直接擦れ合うことで、骨膜が傷つけられたり、微小な骨折をすることで起こります。
本来なら骨を守ってくれるはずの軟骨が薄くなったり、失われてしまうことで、骨同士がぶつかってしまうからです。

なぜ軟骨は減っていくのでしょう?
膝関節軟骨のこと
膝関節にある軟骨は、大腿骨と脛骨の骨頭にある硝子軟骨と、その両脇にある半月板と呼ばれる繊維軟骨、2種類があります。
膝関節には体重の5倍以上、階段を下りるときは8倍の重みが掛かっているそうです。
そんな膝関節ですから、運動する時はもちろん、普通に動いても軟骨は少しずつ擦り減っていきます。膝の周囲の筋肉で体重を支えられない場合はなおさらです。
けれど、この軟骨は、関節内にある関節液によって修復されています。
関節液は関節を動かす時は潤滑油の役割をし、同時に軟骨に栄養を与えて修復を促す役割です。
関節を動かすことで分泌されます。
しかし関節液はずっと潤沢な状態ではありません。関節を動かさないでいる時間が長くなると徐々に吸収されていくのです。
関節を動かせばまた関節液は分泌されますが、関節液が減った状態で関節に体重を掛けてしまうと、軟骨にダメージを与えることになります。
修復よりも擦り減る方が早い場合は、硝子軟骨は徐々に薄くなっていきます。繊維軟骨で出来ている半月板も損傷したり本来の場所から逸脱することもあります。
でも、それでも、関節内が関節液で満たされてさえいれば、軟骨は修復されるのです。
もし硝子軟骨が全てなくなってしまっても、新たに繊維軟骨が作られるそうです。繊維軟骨は、硝子軟骨ほど摩擦係数は低くはありません。でも、骨頭を覆う軟骨ができれば、骨同士がぶつかることはなくなり、痛みは軽減されるのです。

では、関節液をなるべく満ちた状態にして、軟骨を修復するためにはどうすればよいのでしょう。巽先生の提唱する5つの方法で、それが叶います。
たつみ式「ひざの5原則」
巽先生の提唱する「ひざの5原則」とは以下のものです。
- 軟骨を減らさない歩き方
- 軟骨安定・筋力アップ術
- 軟骨への負担を減らす減量術
- からだを変える心の持ち方
- 対症療法をやめること
この中で、軟骨を減らさないという点と、対症療法をやめるという点について、簡単にご紹介します。
軟骨を減らさないために~膝軟骨が一番すり減る最悪のタイミングを知る
先程、膝関節の関節液は、動かさないでいると吸収されてしまうという話しがありました。
1日で一番膝を動かさないでいる時間はいつでしょうか?そう、それは夜寝る時間です。
朝起きた時、膝関節の中はすっかり関節液が抜けて、関節軟骨や骨頭は乾いた状態です。
この状態で関節を動かすとどうなるでしょうか。潤滑油がない状態ですから、軟骨はすり減ってしまいます。
このタイミングで、関節液を出す動きをして、関節内が潤いで満ちた状態にすれば、軟骨を労わってあげることができるのです。
その方法のひとつが「足ほうり体操」です。
前述した変形性膝関節症のMさんがやっていた、朝一番にするFoot Fit 3のコンディショニングモードと、足放り体操。これは全て関節液を出すためだったのです。
足放り体操は、YouTubeで巽先生ご自身が解説されています。
もちろん著書『100年ひざ』の中でも、詳しく説明があります。ぜひご覧ください。
対症療法をやめること~巽先生が対症療法をしない理由
対症療法とは、出ている症状を薬等で感じなくすること。痛みがあれば痛み止めを処方するのも対症療法です。
膝関節の痛みでこの対症療法をすると、膝関節の状態をより悪化させることに繋がりがちです。
関節液がない状態で動いても痛みを感じず、筋肉で支えられない体重が膝関節にかかっても痛みを感じません。
膝軟骨が擦り減っても、骨頭が触れ合って微小骨折が起こっても、気付かずに動いてしまうからです。
痛みは身体からのSOSですから、その痛みが何故起こっているのか、どうすれば痛みを感じている部分を癒せるのか。対症療法に頼り切らずに根本の原因を考えていかなければなりませんね。
からだの力を信じて「100年体力」をかなえよう
ご紹介した足放り体操や、対症療法をやめること以外にも、姿勢やO脚、X脚では歩き方によって軟骨の減り方が違うこと、体重負荷から膝軟骨を守るために必要な筋肉トレーニング等、知っておきたい内容ばかりでした。
そして『100年軟骨』に記されている巽先生の考えは、膝関節や軟骨のことだけに留まらず、私たちのこれからのウェルビーイングのために役立つ暮らし方や生き方に及び、巽先生が言う「100年体力」を実現するためのヒントに満ちていました。
治療の主体は医師ではなく患者である私たちであること、意識を変える時に人の「治る力」が発揮されるのだということは、この先何らかの病に見舞われた時に、必ず役立ってくれることと思います。

膝に違和感や、時々だけれど痛みがあるというかたは、ぜひ今から『100年ひざ』で膝軟骨を守って頂きたいです。
そして、ご自分やご家族が既に膝軟骨を損傷している状態だとしても、『100年ひざ』で軟骨を蘇らせて、痛みから解放されることも不可能ではありません。
治療の主体は私たち自身です。
もし、膝の痛みを年のせいだと諦めたり、かかりつけの医師からも言われているようでしたら、巽先生がこの本で訴えられていることを、ぜひ知ってください。
100年自分の足で歩き続けるために、今出来る事を模索していきましょう。