NHK『シリーズ人体Ⅲ 第3集「命のつながり 細胞40億年の旅」』2025年5月25日放送 

TVレビュー

タモリさんとノーベル賞科学者・山中伸弥さんのW司会でお届けする、人気シリーズの最終章「人体Ⅲ」。
今日は、2025年5月25日に放送されるNHKシリーズ「人体Ⅲ」第3集「命のつながり 細胞40億年の旅」のレビューをお届けします。とても興味深い内容になっていますので、ぜひご覧ください。

スタジオゲストは米倉涼子さんと、競泳女子日本代表 池江璃花子さんです。米倉さんは脳脊髄液減少症を、池江さんは白血病を発症し闘病されたことがありますね。おふたりの言葉の重みにも、何度も頷かされました。

地球上のすべての生き物は細胞兄弟

今回のエピソードではまず、アメリカで進められている革新的な治療法について紹介されました。
重度の腎臓病患者さんに対して、人間の腎臓ではなく動物~ブタの腎臓を移植するという新しいアプローチです。この治療により、患者さんは長年続く人工透析から解放される未来が近づいているのです。

なぜこのような移植が可能になるのか、その理由は生き物の細胞に多くの共通点があるからです。人間の腎臓の細胞写真と、豚の腎臓の細胞写真は、見分けがつかない程似ていました。

実は、私たち人間と動物の細胞は同じ成分で作られており、その共通点は私たちの遠い祖先に由来しています。

その共通点の根底には、40億年前の太古に生まれた最終共通祖先細胞、「LUCA~ルカ」の存在があります。

LUCAとは何か

生き物の系統図を遡っていくと、一つの細胞に辿り着きます。その細胞がLUCAです。

私たちの命はどこから来たのか。LUCAはどうやって誕生したのでしょうか。

研究者が着目したのは生き物の細胞を構成しているアミノ酸。
アミノ酸は宇宙にも存在する物質で、原始の地球にも何百種類もあったようです。
しかし、今地球上にある全生物の細胞は、なぜか同じ20種類のアミノ酸で出来ているのです。それは何故なのでしょうか。

研究者は、何百種類ものアミノ酸を、原始の地球環境に置いたら何が起きるかを実験してみることにしました。乾燥地帯の沼地と同じような環境~日が昇ると気温は上昇し水は乾き、夜になると気温が下がり地表に湿り気が戻る~そのような環境に置いたのです。

すると、あの20種類のアミノ酸だけは寄り合ってくっついて、様々な構造体を作る特別な性質を持っている事が分かりました。

その構造体こそが、キネシンのような細胞内キャラクター、今私達の細胞内で働いているキャラクター達です。そしてそのいくつもの構造体によって生まれたのがLUCAです。

LUCAは、何十億年もの進化の過程でさまざまな生き物に分化してきました。だから全ての生き物の細胞は同じ20種類のアミノ酸を材料に作られているのです。
人間も植物も細菌も、全てがLUCAの子孫なのです。

アミノ酸以外にもその基本的な構造や働きには大きな共通点が残っており、このため、動物の腎臓を人間に移植しても、免疫拒絶反応を抑えつつ機能させることが可能になるのです。

ひとつの命をふたつにする~細胞分裂

LUCAが40億年ずっと繰り返してきたこと、それは細胞分裂です。
細胞分裂は私たちが命をつないでいくために非常に重要な出来事で、進化も、生存も、細胞分裂なくては成し得ません。

番組では、細胞内キャラクター達によってどのように細胞分裂が行われるのか、アクチン、ミオシン、そしてミトコンドリアに着目してCGアニメ化されていました。

アクチンとミオシンの働きにエネルギーを与えるために、多数のミトコンドリアが大量のATPを放出している様は圧巻。私達の体の中で、今この瞬間も同じことが起こっている細胞分裂にも、ATP製造のための酸素が本当に必要であることが身に染みて解りました。

消えゆく細胞兄弟の命

今地球上では、人間の密猟などにより絶滅に瀕している生き物が沢山います。番組ではキタシロサイを取り上げました。

今キタシロサイは2匹のメスが生存しているのみ。静かに絶滅を待っているのです。2018年に最後のオスが亡くなりました。

その最後のオスの細胞は冷凍保存されています。そして、そこから新しい命を生み出そうという研究が進んでいます。

冷凍されている細胞をiPS細胞にすれば、卵子と精子にすることも可能。今現在、キタシロサイの細胞も、卵子と精子になる手前である始原生殖細胞にまで培養出来ているのです。

すでにマウスではiPS細胞で卵子を作製し子どもが誕生しています。

死んだ生き物でも、細胞と遺伝子は生き続けているのです。

絶滅種、絶滅危惧種である、スマトラ虎、インドライオン、アジアゾウなどの細胞たちは同じように冷凍保存されています。

人間の存在によって絶滅させてしまった生き物たちを、このような手段でまた生き返らせるのは、命の火を灯すことは正しいことなのか。人類に、地球全体にどういう影響を与えるのか。

精子や卵子を作る技術をはじめ、さまざまな技術が生命に介入してきている今。
このタイミングで「生命とは何か」ということを考えることが、急務だということがわかります。

まとめ

技術の進歩への驚嘆と畏怖。自分の命があることの価値について、思いを巡らせる時間でした。

そして、LUCAが生まれるきかっけになった、今も私達の体の中で動き続けている細胞内キャラクター達。
なぜ、20種類のアミノ酸だけが太古の環境で細胞内キャラクターとして構造化できたのでしょうか。
他の数百種類のアミノ酸には含まれない何かが、この20種類のアミノ酸にはある。

技術や化学だけでは計り知れない、何らかの叡智が働いているような気すらしました。

これも近い将来、解明される時が来るのでしょう。できれば私の生のある間に、それを知ることができたらいいなと思いを巡らせたひとときでした。

次回は人体III最終回 果てしなき命の探求。3年前、一研究者として最前線の現場に戻った山中伸弥さん、その理由とは。そしてタモリさんと山中さんが語る命の意味とは。
みなさんも、ぜひご覧になってください!

第4集 果てしなき命の探求

6月8日(日) [総合] 午後9:00~9:49  

「人体Ⅲ」は、NHKプラスで1週間の見逃し配信が行われています。
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見逃し配信期間の終了後は、1年間はNHKオンデマンドでご覧いただけます。
有料サービスですが、興味のあるかたはぜひ、NHKオンデマンドのページをチェックしてみてくださいね。
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